[東海若手セラミスト懇話会]
[日本セラミックス協会東海支部]
去る6月20日(木),21日(金)の2日間,日本セラミックス協会東海支部東海若手セラミスト懇話会の2013年夏期セミナーが愛知県犬山市のホテル犬山館で開催されました.今回は87名(学生53名,一般34名)の参加者を集め,招待講演3件,テーブルディスカッション38件(学生31件,一般6件,企業紹介1件),学位論文紹介1件,海外報告1件の発表が行われました.以下,進行順に内容を報告いたします.
1日目;13:25,定刻通り名古屋工業大学の本多運営委員代表の挨拶により会が始まり、より良い懇話会にしていただくために活発な議論と積極的な情報交換を行っていただくよう挨拶がありました。
引き続き招待講演1として,日本原子力研究開発機構の杉本先生より「放射線を利用した高分子前駆体からのセラミック材料創製」と題してお話を頂きました.(→写真1)イオンビームによりケイ素系高分子材料をナノファイバー化する本技術は、形成数、長さ・太さという3次元構造の全ての要素を任意にかつ同時に制御できる特色を有することをわかりやすく紹介いただきました。しかし,原料が高分子であることを活かし、母材の特性を変える、機能性を付与するといった高機能化技術開発が今後の課題であることも説明されました。イオンビームの利用という高いハードルは存在するものの、高い付加価値を有する実用材料への展開が期待される技術だけに,学生さんにとって興味深い話ではないでしょうか.
テーブルディスカッションのアピーリングタイム第1部が,招待講演1の後に行われました.夜に行われるテーブルディスカッションのアピールを一人30秒の持ち時間で1枚の資料を使って行ってもらいました.限られた時間の中で工夫を凝らした一生懸命のアピールが多く見られました.
続く招待講演2では,三重大学の久保先生から「π共役高分子と無機材料とのハイブリッド:合成と機能」というタイトルでお話を頂きました.無機材料との親和性に欠けるπ共役高分子であっても、高分子の鎖末端あるいは高分子の鎖中に適当な極性官能基を導入することによって、シリカ中のシラノール基あるいは二酸化チタン中のチタナール基との相互作用が可能となり、結果として、金属アルコキシド中にπ共役高分子を均一に分散できることをわかりやすくご講演いただいた。粉体として得られる無機蛍光体と異なり、ハイブリッド蛍光体は形態の多様性が特徴であり,バルク体の他に、薄膜(コーティング)、球状微粒子形態、あるいは繊維状の発光体を得ることができるので、広範囲な用途へ対応することができる可能性があり,未来材料として多くの可能性を秘めていると考えられることを紹介いただき,この分野に興味を抱いた若手の研究者や学生さんも多かったのではないかと思われます.
テーブルディスカッションのアピールタイム第2部が招待講演2の後に第1部と同様に行われました.
夕食を兼ねた意見交換会は,宴会場で行われました.至る所で会話に花が咲き交流の輪ができていました.非常に盛り上がり中締めの挨拶があった後も,多くの人が宴会場に残りテーブルディスカッションが始まる直前まで意見交換が続いていました.
テーブルディスカッションは,60件の発表を4グループに分け,コアタイムを設定する形で進められました(→写真2).このテーブルディスカッションとは,本会では恒例となっているポスターセッションの変形版で,発表ポスターをテーブル上に並べて発表する形式です.テーブルディスカッションの発表件数も,おそらく38件と多く,アルコール飲料を片手に持ちながらの議論であったことも手伝って,会場はものすごい熱気でした.熱心な討論が22時30分まで続けられました.なお,招待講演の講師の先生と一般参加者の投票により選ばれた優秀な発表に対して,最優秀発表賞(1件)、運営委員代表特別賞(1件)、優秀発表賞(4件)が贈られました.受賞者氏名,所属と発表題目は,本報告の最後に記したとおりです.熱心な議論や交流は,場所を移して催された二次会の会場で,3時過ぎまで続けられました.
2日目は,JFCCの加藤先生による「イットリウム系超電導線材の微細構造解析」と題した招待講演3で始まりました.ご講演では,二段階本焼熱処理および従来本焼熱処理により製造されたBZOナノ粒子が分散したMOD-YGdBCO層の微細構造変化の成果をご講演いただいた。この種の解析は,まさに熟練技があってもものであり,学生にとってTEMなどの装置に触れる機会が珍しくない昨今では魅力的な結果が得られることを実感したのではないでしょうか。また,2日目朝一番の講演にも関わらず,充実した成果が豊富なために質問時間が多く、時間延長するほど活発なセッションとなりました。
今回も招待講演に対する学生の質問の中から各講演につき1件ずつ,ベスト質問賞が贈られました.これは,学生が積極的に講演の質問に立つことを促すために考えられた賞で,ご講演いただいた先生に選考していただいております.今年で9年目となりますが,非常に多くの学生が積極的に質問に立つようになり,明らかに議論の活発化につながっていると思われます.今回の受賞者の氏名と所属は,本報告の最後に記したとおりです.
休憩をはさみ,学位論文紹介では豊田中央研究所の和田先生が「BaO-R2O3-TiO2 (R=La, Nd, Sm) 異方性化合物の粒子配向化と高周波誘電特性に関する研究」というタイトルで新規のBaO-R2O3-TiO2 (R=La, Nd, Sm) 異方性化合物に関する誘電特性などについて学位論文の研究成果を説明してくださいました.学位取得に向けて刺激を受けた学生さんも多かったのではないでしょうか.
次に海外報告として,三重大学の松井先生より,トヨタ自動車轄ン籍中におけるアメリカに滞在された際の生活についてご報告していただきました.国際舞台で研究成果をアピールする重要性について、特に説明され学生にとって貴重な話になったことと思います。また、英語でのコミュニケーションは当然で、母国語も積極的に話す意気込みもほしいとのことでした。成果創出の厳しい環境での体験を紹介しながらも、発表自体はリラックスした雰囲気で報告していただきました.また,休暇を利用しての旅行などの写真を交えて紹介していただき,若い研究者や学生さんの「海外留学したい」という気持ちを掻き立てたのではないかと思います。
最後に昼食をとりながら,テーブルディスカッション優秀発表賞とベスト質問賞の発表と表彰を行いました.最優秀発表受賞者の愛知工業大学の増田雄一君には,副賞として本多代表が自ら仕込んだ日本酒(→写真3写真4)が贈られ,汗が滴る環境で丹精込めて作り上げた体験を熱く語られました.最後に秋季講演会での再会を約束し,閉会しました.
例年本セミナーでは,クール・ビズスタイルでの参加を呼びかけており,今回もそのリラックスした雰囲気の中で活発な討論が行われました.また,合宿形式ということもあり,夜遅くまで研究のことだけでなく様々なことを語り合い,東海地区の若手が親睦を深める良い機会となりました.この場をお借りして,次回にもより多くの方々のご参加をいただけますよう,ご案内する次第です.
最優秀発表賞 | ||
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増田 雄一 | 愛知工業大学 | 「酵素耐熱性向上を可能とするメソポーラスジルコニアへの固定化と粒子間細孔構造がもたらす触媒担体としての可能性」 |
優秀発表賞 | ||
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近江 隼人 | 豊橋技術科学大学 | 「Agナノ粒子/陽極酸化TiO2ナノチューブ複合体の作製と光化学特性」」 |
森 翔平 | 豊橋技術科学大学 | 「ゲル化過程における化学構造変化にともなう力学物性変化の評価」 |
高原 聡 | 名古屋工業大学 | 「強磁性-強誘電積層体による電気磁気効果」 |
坂元 希美枝 | 三重大学 | 「ガーネット型リチウムイオン導電体Li7La3Zr2O12 相変態挙動」 |
不破 隆司 | 名古屋工業大学 |
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浅井 大育 | 名古屋工業大学 |
長坂 真人 | 岐阜大学 |
written by 井上 幸司(三重県工業研究所)
写真1 招待講演1 |
写真2 テーブルディスカッション |
写真3 最優秀発表賞表彰 |
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写真4 最優秀発表賞表彰 |
2014年1月11日更新