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2020年11月6日(金)にZoomを利用したオンライン開催にて、第61回秋期講演会を開催いたしました。(共催:日本化学会、協力:日本セラミックス協会基礎科学部会)
以下、進行順に内容を報告いたします。
第61回 秋期講演会は、昨年度と同様にオンラインでの開催となり、招待講演2件と(国研)産業技術総合研究所の事業および研究紹介という内容で行いました。産業技術総合研究所中部センター会議室をメイン会場として配信し、参加者のみなさまにはMicrosoft Teamsにて聴講いただきました。
招待講演1件目は、産業技術総合研究所 フェローの大司 達樹 様より、「次代を担う若手セラミストの皆さんへ」と題してご講演いただきました(写真1)。これまでの研究生活と米国セラミックス協会会長をはじめとする様々なご経験からの、貴重なお話しをいただきました。特に、日本や米国の学会や研究生活では、国民性や多様性の違いからくる議論の仕方、学会の運営、ダイバーシティに関する取り組み、どうやったら伝わる英語になるか、発音やアクセントまで、実際に体験しないと気づけない様な多岐にわたる話をお聞かせいただきました。さらには、米国でのインフォマティクス研究やそれら材料研究に対する予算投資のスケールの違いに驚きました。また近年、成長が著しい中国の材料研究に関してもご説明いただき、特に論文の投稿・出版だけではなく、査読に関しても非常に積極的であるとう点は印象に残りました。こうした中で、日本の材料研究の強みをさらに生かして、不得手なところを補いながら更なる成長ができるよう、私たちも努力しなくてはと感じました。これからグローバルな活躍が期待される若手研究者に大いに刺激となるようなご講演をいただきました。
招待講演2件目は、名古屋工業大学 准教授の星 芳直 様より、「電気化学インピーダンス法による腐食反応解析とモニタリング」と題してご講演いただきました(写真2)(写真3)。電気化学インピーダンス法の概要とその活用方法についてご説明いただきました。鉄筋コンクリートの腐食検出では、コンクリートを壊すことなく内部の鉄筋の腐食具合を検出できる技術について、その原理と応用方法についてご説明いただきました。また銅亜鉛鋼の溶解のリアルタイムイメージングのお話では、実際の観察写真と電気化学的手法による、腐食のその場観察技術についてご説明いただきました。「非破壊検査」や「その場観察」に関する技術は従来測定に時間と労力がかかっていた試験を迅速に行え、今までわからなかった現象を見える化する重要な技術と感じました。
また最後は若手の研究者の皆さんへ「夢を持って、ポジティブに研究を」とメッセージをいただきました。
産業技術総合研究所の事業紹介では、マテリアルプロセスイノベーションプラットフォーム事業について、産業技術総合研究所 極限機能材料研究部門 研究部門長の松原 一郎 様より、ご紹介いただきました。(写真4)。産総研では自動車や航空機等のモビリティ用材料等に利用されるセラミックスや合金等について、原料となる粉体合成から部素材に至るまでのプロセス全体を一気通貫で開発する機能を備えた拠点を整備する予定で、製造から分析に関する最近の装置を導入するとのことでした。また先行研究として機械学習を活用した材料開発をご紹介いただきました。特に製造時における様々なパラメーターを随時測定、収集することでプロセスインフォマティクス(PI)へ活用でき、研究開発の加速が期待されました。また研究トピックス紹介では、モビリティへ活用される材料、部材研究を動画にてご紹介いただきました。セラミックスに限らず、多岐にわたる材料の応用研究がなされており、産総研の研究の幅広さが伺えました。
本会の最後には、先に実施された2件の招待講演に対する学生参加者からの質問の中から、ご講演の先生方にベストディスカッション賞をそれぞれ1名ずつ選出していただき、表彰を行いました。慣れない開催形式で質問しにくいなかで、積極的に多くの方にご質問いただきました。受賞者の氏名と所属は、本報告の最後に記した通りです。(写真5)(写真6)(写真7)。
コロナ禍の収束が不透明な中で、本会もオンライン開催となりました。この様な開催形式にも関わらず、特に大きな問題もなく盛況のうちに終えることできましたのも、講師の方々をはじめ、オンライン参加者の皆様、現地でサポートしてくださった東海若手セラミスト懇話会委員の方々のご協力の賜物と、心より感謝申し上げます。
講演: 招待講演1 | 質問者: 堀江 未來乃 | 大学: 名古屋工業大学 |
講演: 招待講演2 | 質問者: 永墓 克海 | 大学: 名古屋工業大学 |
産業技術総合研究所 山口祐貴
作成日時:2021年12月03日