光学系の調整(6)
波長校正用標準試料の測定

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データの保存と複製の作成

校正測定を行う前に,今までのデータをファイルに保存,さらに他のパソコンにファイルを転送して, 複数の記録媒体にデータの複製を作成すること, その後に新しい Igor エクスペリメントファイルを作成しなおすことを推奨します。 このためには以下の操作を行います。

(1) Igor の [File] メニューから [Save Experiment] を選択して,現在のエクスペリメントファイルをそのまま保存します。
この操作は [Ctrl]+[S] のキー操作でも代用できます。 [Save Experiment] が選択できない状態になっている場合には,既に現状のデータが保存済みであることを意味します。

(2) 別のパソコンで FTP サーバを起動します。
BL-4B2 実験ステーションの GATEWAY パソコンで Tiny FTP Daemon を起動すれば,ホスト名:mdspc1.kek.jp として, FTP サーバが起動します。

(3) Dell Dimension 2400 から FTP クライアント (FFFTP) を起動し, 保存されているエクスペリメントファイルを FTP サーバにアップロードします。 この操作により,現在のデータの複製を異なるパソコン上に保持することができます。
同じ FTP ユーザアカウントを他のパソコンで使用しなければ,測定中も FTP クライアントは起動したままでかまいません。

(4) Dell Dimension 2400 で起動している Igor の [File] メニューから [Save Experiment As...] を選択して, 新しいファイル名でエクスペリメントファイルの複製を保存します。

(5) [MDS] メニューから [Delete All Scan Data...] を選択して,すべてのスキャンデータを消去します。 この操作の前に過去のデータが保存されていることを確認してください。

(6) [File] メニューから [Save Experiment] を選択して,現在のエクスペリメントファイルを保存し直します。
この操作を実行する前なら,エクスペリメントファイルを読み込み直せば元の状態に戻ることができます。


標準試料の設置

(1) 平板回転試料台に標準 Si 粉末 (NIST SRM640c)を充填した試料ホルダを設置し,ビームストッパを取り付けます。

(2) [MDS] メニューから [Rotation control panel] を選択して「Rotation」コントロールパネルを表示します。

(3) 回転速度(0.5 秒に 360 °回転)を指定し,[Start Rotation] ボタンをクリックします。


入射スリットとモニタカウンタ用アパーチャの設置

(1) 測定の目的に応じて,適切な入射スリット(幅 2.5〜10 mm, 高さ 0.05〜1 mm)を選び, 入射スリットボックスに挿入して下さい。

本来は目的とする試料と同じ条件で標準試料の測定を行うべきです。 目的の試料がキャピラリ試料の場合には, ここではキャピラリの太さに合わせた高さ制限スリットを使い, 対称反射法で標準 Si 粉末の測定をします。

(2) モニタカウンタのカウント率が 40,000 cps 程度以下になるように, モニタカウンタの受光部上部にアパーチャ(開口)制限板を挿入します。

アパーチャ制限板は, 2-2mmφ,4-2mmφ,9-2mmφ,13-2mmφ,10mm□の5種類から選ぶことができます。


校正測定条件指定バッチデータの作成と確認,実行

(1) [MDS] メニューから [Comment Editor control panel] を選択して「Comment Editor」コントロールパネルを表示します。 「Target for Edition」に,未使用のバッチ番号のうち最も若い番号を入力します。 使用するスリットなど必要な情報を入力したら [Save Comment] ボタンをクリックします。 以下の操作で作成する一連の測定条件データでは,先頭バッチ位置に既に作成されたコメントを参照する仕様となっています。

(2) [MDS] メニューから [Condition for Si Standard Measurement...] を選択します。

「Make Si standard condition」ダイアログから Wavelength (A)(波長),Unit FT (s)(単位計数時間),First Batch No.(開始バッチ番号), Measurement Mode(非対称スキャンか対称スキャン)を入力します。 波長については設定波長の値 (1.2 など) ではなく,同じ設定波長で過去に校正された値 (1.208 など) を入力してください。 開始バッチ番号としては未使用の最も若い番号を入力してください。

以下を参考にしてください。

<最近の波長校正結果>
測定日設定波長(Å)校正値(Å)単位計数時間(s)測定反射数
2007年10月27日1.21.20831(3)0.519
2007年10月15日1.21.20828(2)0.512
2007年10月06日1.81.80797(2)18

(3) 「Make Si standard condition」ダイアログの [Continue] ボタンをクリックしてバッチ測定条件の作成を開始します。 No. 6 〜 No. 1 の検出器で測定可能な Si の反射ピークのすべてについてバッチ測定のリストが作成されます。 各バッチ測定の条件は「Scan Control」と「Comment Editor」コントロールパネルの Target for Edition にバッチ番号を入力すれば確認できます。 「Scan Control」コントロールパネルの [Show Scan List] をチェックするか, [MDS] メニューから [Bring Scan List to Front] を選択すればバッチ測定のリストの一覧が 「TableBatch」テーブルに表示されます。

(4) 測定条件のリストを編集します。 「Scan Control」と「Comment Editor」コントロールパネルから測定条件を編集できますが, 表計算ソフトの操作に慣れていれば「TableBatch」テーブルを直接編集する方が容易です。 "Point" カラムの任意のセルをクリックすれば該当する行全体が選択され, 縦にドラッグすれば複数行を選択することができます。 消去/コピー/ペーストなどの必要な操作を行います。 [MDS] メニューから [Predict Measurement Time...] を選択し, 測定するバッチ番号の範囲を指定すれば,コマンドウィンドウに所要時間の目安が表示されます。 通常は No. 6 検出器による測定に対応する行だけを残すか, これに加えて No. 5 〜 No. 1 検出器による 111 反射の測定に対応する行を残して,他の行を削除します。
Si 111 反射をすべての検出器で測定することにより, アナライザ角度あるいは2Θ補正角の狂いをチェックすることを推奨します。
「TableBatch」を直接編集した場合には,データの番号が行番号とずれる場合があります。 データの番号を行番号に合わせてつけかえるためには, [MDS] メニューから [Renumber Wave Name...] を選択します。

(5) はじめに Si 111 反射の測定を行います。 「Scan Control」パネルから Target for Edition として該当するバッチ番号を選択し [Safe Scan] ボタンをクリックするか, [Batch Scan...] ボタンをクリックして開始/終了バッチ番号に該当するバッチ番号を指定し,[Continue] ボタンをクリックします。
[Batch Scan...] ボタンにより起動するバッチ測定を中断する必要があれば, 「Igor」ウィンドウの左下隅に現れる [Abort] ボタンをクリックします。
観測されるピーク位置がスキャン範囲の中央になるかを確認します。 観測されるピーク位置がスキャン範囲の中央になっていない場合にはこのピーク位置から波長を概算し, (2) の操作からやり直します。
111 反射の2Θピーク位置 2theta(deg. 単位)から波長を概算するためには,コマンドウィンドウに
print 2*5.4312/sqrt(3)*sin(2theta*pi/360)
と入力します(上の式をコピー&ペーストして 2theta の部分を書き換えてもかまいません)。

(6) 次に回折角 90°付近の反射の測定を行います。 「Scan Control」パネルから Target for Edition として該当するバッチ番号を選択し [Safe Scan] ボタンをクリックするか, [Batch Scan...] ボタンをクリックして表示されるダイアログで開始/終了バッチ番号に該当するバッチ番号を指定して [Continue] ボタンをクリックします。 観測されるピーク位置がスキャン範囲の中央になっていない場合にはこのピーク位置から波長を概算し, (2) の操作からやり直します。
hkl 反射の2Θピーク位置 2theta(deg. 単位)から波長を概算するためには,コマンドウィンドウに
print 2*5.4312/sqrt(h^2+k^2+l^2)*sin(2theta*pi/360)
と入力します。hkl の値は「Comment Editor」コントロールパネルの「Additional Comments」セクションから確認できます。

(7) 残りの反射の測定を行います。 標準試料の何本の反射について測定を行うべきかは,測定の目的に依存するかもしれません。 「Scan Control」コントロールパネルか [MDS] メニューから [Batch Scan...] を選択し, 「BatchScan」ダイアログで実際に測定するはじめのバッチ番号と最後のバッチ番号とを指定します。 [Continue] ボタンをクリックすれば自動測定が始まります。

(8) 測定が完了したら, Igor の [File] メニューから [Save Experiment] を選択して, 測定データの付属したエクスペリメントファイルをそのまま保存し, FTP により別のパソコンに転送してください。

(9) 別のパソコンで校正データを含んだ Igor エクスペリメントファイルを開き, [MDS] メニューから [Save Data Single-Arm Scan...] を選択して, 保存するデータと保存場所を指定すれば,波長校正用のデータファイルが作成されます。


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2008年1月18日更新